アルコール性肝臓疾患 ~脂肪肝、肝炎、肝硬変~

 長期間の大量アルコール摂取は、肝臓に様々な影響を及ぼします。アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、そしてアルコール性肝硬変があります。

アルコール肝臓疾患

脂肪肝は症状が出現することは稀で、エコー検査で見つかることが多いです。禁酒により改善します。

アルコール性肝炎は、脂肪肝の状態で更に大量飲酒をした場合に、肝炎(腹痛、発熱、横断の症状)が出現する状態です。肝炎の状態になった人は、既にアルコール依存症になっていることが多いです。

肝硬変は、アルコール肝臓疾患の最終段階で、死に直結する状態です。アルコールは、肝炎とは異なり炎症と細胞の壊死を伴うことなく、肝臓の線維化を引き起こします。米国では肝硬変によって死亡する人の40%がアルコール性と推測されています。

 

アルコール肝硬変の機序

肝臓細胞内にはアルコール分解経路が3つ

① アルコールデヒドロゲナーゼalcohol dehydrogenase

② ミクロソームエタノール酸化系microsomal ethanol oxidizing system

③ ペルオキシソームカタラーゼperoxisomal catalase

アルコール代謝の多くは、①の経路によりアセトアルデヒドが生成されます。アセトアルデヒドは酢酸に分解されます。

アルコール摂取が増加すると

① 脂肪酸の取り込みが増加し、脂肪酸の酸化やリポ蛋白分泌が低下し、細胞内にトリグリセリドが貯留され、脂肪肝になります

② 蛋白の合成、糖化、分泌が低下

③ アセトアルデヒドが蛋白と結合し、酵素活性を阻害、微小管形成や肝臓における蛋白移動の阻害による肝細胞障害

④ 過酸化物質がKupffer細胞(肝類洞内皮に存在する貪食細胞)を活性化し、線維化を促進するサイトカインを生成されます。

⑤ コラーゲンや細胞外マトリックスが過剰に生成され、肝細胞は減少。これらが繰り返されると肝硬変になります。

肝硬変の症状

症状は、アルコール性肝炎であっても、肝炎による肝硬変であっても、大きな違いはありません。ただ、アルコール性の場合は完全な禁酒により改善する可能性があります。

具体的な症状は、漠然とした右上腹部痛、発熱、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振、倦怠感、腹水、浮腫、上部消化管出血などがあり、直接的な症状というよりは肝臓機能低下による間接的な症状が多いことが特徴です。

検査の異常所見は、慢性の消化管出血、栄養障害、門脈圧亢進に伴う脾機能亢進、アルコールによる直接的な骨髄抑制による貧血。進行するとビリルビン上昇、凝固機能異常が合併します。

肝硬変を合併しているのも関わらず飲酒継続した際は、5年生存率は50%未満ですが、禁酒により改善します。禁酒継続できた方は、肝臓移植が選択枝に挙がることもあります。

自覚のないまま、脂肪肝、肝炎、肝硬変と進んでしまうことがあり、気づけば肝硬変だったということも少なくありません。お酒の量は控えめに楽しみたいですね!

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