アルコールと骨粗鬆症

骨粗鬆症といえば、女性、特に閉経後の女性に多いです。病的な骨粗鬆症は、ステロイド剤内服による影響が有名ですが、アルコール多飲も大きな骨粗鬆症の危険因子です。

アルコールの影響

アルコール過剰摂取により胃腸からのカルシウム吸収が減少します。また、アルコールには利尿作用があり、対尿時に体内のカルシウムが排出されることがあり、過度のアルコール摂取は骨粗鬆症と関連するとされています。

アルコール依存症になるくらい大量にアルコールを摂取すると、大抵の場合は”るい痩”になります。それはアルコール以外の身体に必要な栄養素の摂取が不足するからです。カルシウムも摂取不足になる傾向にあります。摂取不足も骨粗鬆症の危険因子に関与しています。

性別による影響

女性においては、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが骨吸収を緩やかにして、骨からカルシウムが溶け出すことを抑制します。閉経のころになるとこのエストロゲンの分泌が低下し、急激に骨量が減り骨粗鬆症となります。

男性においては、男性ホルモンの一つにアンドロゲンがあります。アンドロゲンはいくつかの機序で骨吸収抑制作用を持つことが確認されており、男性でも更年期以降は(女性ほどではないものの)骨粗鬆症になりやすくなります。

アルコールは大腿骨頭壊死の重要な危険因子の一つとされています。ラットの研究になりますが、興味深い研究があります。アルコール大量摂取させると、その量とは関係なく、(メスではなく)オスラットに大腿骨頭壊死が生じたという結果です。なぜオスに多いのかはわかっていません [Shimizu, 2016]。

遺伝子多型との関連

飲酒により顔が赤くなる人は、(アルコールの代謝産物である)アセトアルデヒドを分解するALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素)の活性が低い人です。つまり、体内にアセトアルデヒドが高くなりやすい人ということになります。

このアセトアルデヒドが影響すると推測されますが、顔が赤くなる人は骨粗鬆症の危険が高くなることが知られています。これに対する対策は、ビタミンEの摂取が部分的には有効です [宮本, 2018]。

予防

骨粗鬆症と診断された場合は、医療機関での治療がお勧めです。でも、診断はされていないものの何らかの予防法を実践した人には以下がお勧めです。

食事療法

カルシウムの多い食事、カルシウムサプリメントの摂取。ただし過剰摂取すると腎臓・尿管などに結石ができる可能性が高くなります。

運動療法

運動は、骨刺激により骨密度上昇作用、背筋などの強化により圧迫骨折予防、転倒予防効果があり、1石3鳥です。負担にならない程度に毎日実施したいです。1日8000歩、週3日のウォーキングを1年継続すると骨密度が 1.7%上昇したという報告もあります。

参考

東浩太郎. 骨粗鬆症発症のメカニズム. 日老医誌 2019, 56, 446-123

宮本健史. アルコールと骨粗鬆症のリスク. アルコール健康医学協会 2018,25, 2-7

Shimizu J et al. Susceptibility of males, but not females to developing femoral head osteonecrosis in response to alcohol consumption. PloS One 2016, 11, e0165490

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年

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