日本酒度と甘口・辛口の定義
日本酒のラベルに「辛口」と書いてあるのに口当たりは「甘口」、またはその逆という風にラベルの表記と実際の味が異なることが時々あります。これは日本酒の「甘口・辛口」の定義が、味覚そのものとは異なるからです。
目次
日本酒度
ラベルに記載のあるお酒の甘口・辛口は日本酒度を反映します。日本酒度とはお酒の比重を示すための単位です。
日本酒度 = (1/比重 – 1)× 1443
で計算されます。
アルコールの比重は水の約0.8倍で、日本酒の比重はアルコール分では軽くなり、糖分などの成分で重くなる傾向があり、0.993 ~ 1.007 となります。つまり、約”+10”から”-10”の間を示します。
実際の日本酒度の測定は、少量のお酒をシリンダーのような容器に入れて、15℃にします。そして、日本酒度計という細長い比重計を浮かべて計測します。アマゾンで10000円くらいで購入できます。
アルコール度数と日本酒度
同じ日本酒でも、原酒は水で薄める前のお酒なのでアルコール度が高いです。逆に飲みやすさを優先して、アルコール度が低めの日本酒も販売されています。アルコールは比重が軽いのでアルコール度が高いと比重が低くなり、日本酒度がプラスに傾きます。
アルコール分が多い and/or 糖分が少ないとプラスに傾き、アルコール分が少ない and/or 糖分が多いとマイナスに傾きます。アルコール分は日本酒ではおおよそ一定なので、糖分が多いか少ないかで日本酒度がほぼ決定されます。日本酒度がプラスの場合は糖分が少なく(辛口)、マイナスの場合は糖分が多い(甘口)という結論になります。
日本酒度の一般酒、吟醸酒、純米酒の平均は、それぞれ+3.7、+4.3、+4.0です(国税庁, 2012年)。甘く感じる吟醸酒の方が、純米酒よりも日本酒度が高いのは不思議な感じです。吟醸香のために甘い(糖分が多い)イメージがありますが、実際は糖分が少なめということなのでしょう。
実際の味覚とのずれの原因
日本酒度と実際の味覚がずれる理由には、香りや糖分以外にも、いくつかあります。
一つ目は酸味と推測されています。酸味には乳酸以外に、コハク酸、リンゴ酸が含まれます。酸味が強いと辛口に感じます。
二つ目は同じ糖分でも、ブドウ糖、オリゴ糖では甘さの感じ方が全く異なります。ブドウ糖は甘いですが、オリゴ糖はそれほど甘くありません。糖分を構成する比率によって実際の味覚は変化します。
味覚はいろいろな要素を統合的に判断したヒトの感性で、日本酒度は純粋に計測値ということです!