アルコール分解とビタミン

ビタミンとは

ビタミン(vitamins)は、極めて微量(1日数μg~数mg)で、いろいろな栄養素、タンパク、糖質、脂質、そしてアルコールを分解するための補助因子、酵素、補酵素として働きます。ヒトはビタミンを合成することがほとんどできませんので、体外から摂取すべき必須の栄養素です。

水溶性のビタミン(B、Cなど)は、大量に摂取しても尿に流れるので健康被害はありませんが、貯蓄できる量は少ないです。一方で脂溶性(A、D、E、Kなど)は、貯蓄できる量は多いですが、サプリなどで大量に摂取すると健康被害を生じることがありますので、要注意です。

アルコール分解の酵素として

別の記事に記載したのように、アルコールは酵素・アルコール脱水素酵素(ADH)によりアセトアルデヒドに、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)により酢酸へと分解され、最終的には二酸化炭素と水になります。

アルコールとビタミン

大量の飲酒をするとアルコールはADH酵素だけでは処理しきれずに、肝ミクロゾームに存在する非アルコール脱水素酵素系であるミクロソーム-エタノール酸化系(MEOS; microsomal ethanol – oxidaizing system)によりアセトアルデヒドに代謝されますが、その際にビタミンB1が使われます。MEOSでは活性酸素が産生され、肝障害を来たします。

また、アセトアルデヒドが酢酸に分解される際にビタミンB3(ナイアシン)が使用されます。

そのために、アルコールの代謝には、ビタミンB1とB3が多く必要となります。

ビタミン欠乏による病態

ビタミンB1欠乏

ビタミンB1欠乏になると、脚気(心不全、末梢神経障害、むくみ)、認知症(Wernicke脳症、コルサコフ症候群など)が出現します。

末梢神経障害は、アルコールそれ自体による障害とビタミンB1不足による障害の両者が合併することも多く、区別することは困難です。治療はもちろん断酒とビタミン補充です!

ビタミンB3欠乏

ビタミンB3欠乏は、ペラグラが有名で、皮膚,粘膜,中枢神経系,および消化管の症状を特徴とします。

皮膚症状にはいくつかのタイプの病変があり,通常は両側対称性に認められ、太陽光線により,皮膚炎が生じます。粘膜の症状は主に口腔に影響を及ぼします。舌炎および口内炎は,急性欠乏症の特徴です。欠乏症が進行するにつれて,舌および口腔の粘膜が発赤し,次いで口腔の疼痛,流涎の増加,および舌の浮腫が起こります。欠乏症の早期にみられる消化管症状には,咽頭および食道の灼熱感や腹部の不快感および膨隆などがあります。中枢神経系症状には,精神病症状,脳症(意識障害を特徴とする),認知機能低下(認知症)などがあります。

にんにく注射

二日酔いの後に「にんにく注射」が良いという噂をよく聞きます。成分はビタミンB1を中心としたビタミンB系とビタミンCを混合したものが多いようです。

ビタミンB1は、臭いが強く、内服(商品名 アリナミン)でも注射でも体に投与した後で、体全体が妙な臭いになります。この臭いを比喩して「にんにく注射」と言われています。

大量飲酒後は、ビタミンB系が不足しがちなので、にんにく注射はそれなりに理にかなっていると解釈できます。

文献

松本博志. アルコールの基礎知識 Jpn J Alcohol Drug Dependence 2011,46,146-156

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