日本酒の分類
子供の頃、日本酒を父親と買いに行ったとき、特級、一級、二級・・・、という分類がありました(1992年までの日本酒級別制度)が、現在の分類は全く異なります。
日本酒に拘りのある方には下記の分類は当たり前の話かもしれませんが、改めてここで確認しておきます。
目次
本醸造と純米酒
本醸造酒は、醸造アルコールの添加があり、純米酒では添加がありません。
醸造アルコールは、戦後の日本酒が不足していた時期に雑穀から作ったアルコールを添加して日本酒を大量に生産したことから始まりました。ただ、蒸留酒なので酎ハイのような”さっぱりした感じ”のお酒を造るのに一役果たします。
純米酒は、米、米麹、そして仕込みの水のみを原材料としています。
個人的には、醸造アルコールが添加されているお酒は、日本酒以外には存在しませんので、純米酒以外は飲むのに気が進まない気持ちになります。
精米歩合による分類
精米歩合とは、日本酒を醸造する際は、原料の米の表面を雑味を減らすために削ります。外側を削り残った割合を精米歩合と定義します。精米歩合が低いほど、雑味の少ないお酒になり、吟醸酒に適しているとされます。
吟醸の香りが強い、弱いは、酵母の種類による要素が大きいです。
本醸造酒は精米歩合が70%以下、特別本醸造酒は60%以下
純米酒は精米歩合が70%以下、特別純米酒は60%以下
吟醸酒は精米歩合が60%以下、大吟醸酒は50%以下、となります。
つまり、通常の醸造アルコールが添加された吟醸酒は、醸造アルコールが添加された精米歩合が60%以下のものを示します。純米大吟醸酒は、醸造アルコールが添加されていない精米歩合が50%以下のものを示します。
醸造アルコールは、吟醸の香りをお酒に残すために使用されることもあり、吟醸酒の場合は水増しとは別の目的で使用されることもあります。その場合は、必ずしも醸造アルコールはデメリットばかりとはいえません。
吟醸酒の定義
吟醸酒とは吟醸造りで醸造されたお酒で、純米酒かどうかという分類とは全く別の分類方法です。吟醸造りとは10度前後の低温で1ヶ月近い時間をかけて発酵させる製法です。低温で発酵することで、香り成分がもろみに閉じ込められます。吟醸酒とは、バナナやリンゴのような果実の香りである吟醸香をお酒に残したもので、全国の品評会で吟醸香の有無が重要視されています。
雑味を最小限にするためには、精米率の高い(精米歩合の低い)お米を使用します。吟醸酒で40%以上、大吟醸酒で50%以上を削ります。精米率を高くすると、米の表層部分に存在するミネラルやたんぱく質などの栄養成分が少なくなります。その上10℃の低温で発酵させると酵母にとってはかなり過酷な状態になります。そのような環境では、酵母は果実のような吟醸香を作り出します。一方で、精米率の高いお酒は、米のうま味がなくなってしまうという相反する要素が存在します。
私自身は、吟醸香がかすかに感じられる程度の純米酒は好きですが、吟醸香をセールスポイントにした大吟醸酒のいくつかはあまり好みではありません。過ぎたるは及ばざるが如しです。
生酒、生貯蔵酒、生詰め酒
日本酒は通常は、貯蔵前と出荷前の2回火入れをしますが、この火入れを1回もしていないのが生酒です(保存は、冷暗所が必須!)。生酒はフレッシュな感覚を味わうことができる反面、熟成の妙味が活かされていません。古くなると残存酵素と火落ち菌の発育のために「生老い香という異臭」を発生させる弱点があります。春から夏までの季節商品として扱うのみで、通年商品にはなりえませんので、春先以外の生酒は要注意です。
生貯蔵酒は、火入れをせずに低温貯蔵して、出荷前に1回だけ火入れしたものです。生酒よりは日持ちしますが、早めに飲み切った方が良いです。
生詰め酒(ひやおろし)は、早春に火入れをしてから低温貯蔵して、夏を越す間に熟成させます。秋の瓶詰の時は火入れはせずに出荷するお酒です。秋の味覚にぴったり来る印象です。
生酒は、新鮮なイメージがあり、私自身も「濁り活性生酒」を好んで飲んでいた時代があります。しかしながら、日本酒は本来、冬に醪を仕込んで春先に搾り、夏の間熟成させて秋に完成します。春先の生酒、時には活性清酒のようなものを含め、新たな試みで、楽しさはありますが、王道は秋に完成する熟成された純米酒であり、日本酒の良さを代表しています。
新酒と古酒
以前は火入れをするまでが新酒でしたが、現在では上槽した年の年度内に出荷されたものを新酒と呼ぶことが多いです。
古酒は、熟成期間が1年以上のものを指しますが、3年以上熟成したものが名実ともに古酒と呼んでよさそうです。美味しい古酒になるためには、時間がたつとコクが増す成分を多く含む必要があります。精米歩合の高いものがアミノ酸を多く含みますので、精米歩合の高めの純米酒が古酒になると大きく風格を増します。
原酒と無濾過酒
通常は、瓶に詰める前に加水調整してアルコールを15-17度にしますが、加水調整をしていない段階のものを原酒と呼びます。
無濾過酒は、活性炭素による濾過をしていない酒で、原酒であるかどうかとは関係ありません。「無濾過原酒」というのは無濾過の原酒のことを示します。